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アズーリ新監督は“経験不足の老将”。
優先すべきは才能か、システムか?

posted2016/10/07 11:00

 
アズーリ新監督は“経験不足の老将”。優先すべきは才能か、システムか?<Number Web> photograph by AFLO

かつて栄華を誇ったイタリア代表監督としては地味すぎるベントゥーラ。“扱いやすい監督”だけで終わる気は毛頭ないと思われるが……。

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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 EURO2016の後、ロシアW杯欧州予選を戦うイタリア代表の新体制が発足した。

 闘将コンテ(現チェルシー)の後釜に収まったのは、御年68歳の前トリノ監督ジャンピエロ・ベントゥーラだ。

 ほんの数カ月前までスズキ・イタリア自動車のテレビCMでとぼけた三文芝居を見せていた好々爺は、堅牢な3バックと巧みなカウンターを使うチームを好む。

 若手選手の発掘や指導に定評あるベテラン指揮官としても知られるが、ベントゥーラは初陣の選手選考をめぐる発言で早速物議を醸した。

「私が代表で3-5-2を使い続ける限り、FWベラルディにチャンスはない」

 ベラルディは躍進著しいサッスオーロとU-21イタリア代表のエースだ。セリエA通算得点はすでに40に上り、今シーズンもEL予選から数えて公式戦6戦7発と絶好調だった。

 3トップの右サイド近辺でのプレーを好み、周囲を活かす術を覚え、若くしてチームの大黒柱になっている。“ベラルディこそ次世代のアズーリを背負って立つ人材”と期待をかけるサッカー関係者は少なくない。

御大サッキも「ベラルディ外しは誤りだ」と警鐘。

 しかし、新監督ベントゥーラは9月1日の親善試合フランス戦を前に「就任から準備期間が少ない」と理由をつけ、ベラルディだけでなくFWエルシャーラウィ(ローマ)やFWインシーニェ(ナポリ)といった旬の若手サイドアタッカーたちに代表への門を閉ざした。

 アズーリの新監督は、W杯予選突破のためには自らの3-5-2構想まずありきで個々の選手が持つ際立った才能活用は二の次である、という姿勢を早々に打ち出したのだ。

 これには、就任直後というのにあまりに狭量ではないか、と一斉に疑問の声が上がった。
『ガゼッタ・デッロ・スポルト』紙は「(ベラルディを排除するとは)ベントゥーラ、気は確かか? 戦術で才能を潰すのか」と一面大見出しで新代表監督を非難。

 かつて代表を率いた御大サッキは「ベントゥーラよ、ベラルディ外しは誤りだ」と訴えた。直言の根っこには、自らの戦術至上主義と天才バッジョが対立した'94年アメリカW杯での苦い経験がある。

【次ページ】 ベントゥーラは慌てて4-2-4採用を表明も……。

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