バルサとレアルが抱える戦術的課題 失われた機能美、強まる個人への依存傾向

2大メガクラブがそろってつまずく

セルタに3−4で敗れたバルセロナ。ここ数年はシステムの機能美が失われつつある 【写真:ロイター/アフロ】

 バルセロナは10月2日(現地時間)、セルタ・デ・ビーゴの本拠地バライードスで驚くべき大敗を喫した。3−4で敗れたこの一戦では終了間際に同点に追いつくチャンスがあったものの、早い段階でさらなる大差をつけられていた可能性もあった。その数時間前、サンティアゴ・ベルナベウではレアル・マドリーもエイバルを相手にまさかの1−1のドローに終わっている。

 同日に番狂わせを許したリーガ・エスパニョーラの2大メガクラブは、いずれも共通の課題を抱えている。いまだにチームとして円滑な機能性を確立できておらず、個々の能力に依存する傾向が年々強まっていることだ。

 個々が最高のパフォーマンスを発揮できず、チームをけん引する選手が出てこない試合では、チームの連動性や組織力が打開策となるものだ。にもかかわらず、バルセロナもレアル・マドリーもなぜチームとしての機能性を確立することができないのだろうか。

 とりわけバルセロナは10年以上も前から4−3−3のシステムをベースに、華麗なプレースタイルに慣れ親しんできたチームである。ジョセップ・グアルディオラとティト・ビラノバの指揮下(2008〜13年)、もっと言えば現チームの土台を築いたフランク・ライカールトの時代(03〜08年)から、選手たちがシステムの一部としての役割を担っていることははっきりと見てとれた。リオネル・メッシ、シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタがFIFA(国際サッカー連盟)バロンドールの最終ノミネートを独占した10年ごろまではそのことに疑いの余地はなかったのだ。

 それがここ数年は、かつてスター選手たちの力を引き出していたシステムの機能美が明らかに失われてきている。

メッシの不在によりチーム力が低下

個の力への依存度が高まっており、メッシ(左)を欠くとチーム力が低下してしまう 【写真:ロイター/アフロ】

 セルタ戦では決定的な4失点目をもたらしたマルク=アンドレ・テアシュテーゲンの致命的ミス以上に、果敢な攻撃参加によって2ゴールを上げ、3点目まで手にしかけたジェラール・ピケの気迫溢れるプレー、そして遅すぎたとはいえ効果抜群だったイニエスタの投入に伴う後半の追い上げが際立った。

 その傍ら、相手のレベルが上がれば上がるほど、メッシの不在によるチーム力の低下が露呈されることもまた、この試合で明らかになった事実だった。

 バルセロナとは裏腹に、セルタは選手個々の能力以上にチームとしての強さが際立った。エドゥアルド・ベリーソ率いるセルタには、バルセロナやレアル・マドリー級のスーパースターも、アトレティコ・マドリーが擁するようなエクセレントな選手もいない。それでもチームとして明確な機能性を確立している彼らは、この試合の前半を通してバルセロナが耐え難いほどのハイプレスをかけ続けた。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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