「前半は一人ひとりがボールを持つ時間が長くリズムが悪かった」と森重。後半は効果的に原口を活かすなど、攻撃面でも工夫をこらした。(C) SOCCER DIGEST

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 イラク戦の60分以降、つまりイラクに同点ゴールを献上してから、この試合で先制点を奪っていた原口元気が、より一層輝きを増していった。アタッキングサードでの仕掛けの勢いが止まらない。まさにキレキレ――。終盤、イラクを追い詰めた猛攻の中心には紛れもなく原口がいた。
 
 そして、その原口の躍動を陰で支えたのが最終ラインの森重真人酒井高徳だ。森重は酒井高とともに、前半は得点シーン以外にそれほど目立たなかった原口の突破力を生かそうと、ビルドアップに工夫を施している。森重が言う。

「前半は、単純に自分が持ち上がって高徳にパスを付けても、攻撃に何も変化を起こせないことが多かった。後半は自分が持ち運ぶだけじゃなく、まずは高徳に簡単に預けて、そこで相手をかわしたり、(原口に)パスだったり、というバリエーションを考えながらやれた」
 
 たしかに前半は酒井高が「モリ(森重)くんがボールを持った時に、少し裏を狙う意識が強すぎたかなと思います。相手の陣形も崩れなくて停滞した感じがあった」と言うように、イラクのサイドハーフの選手がきっちりと原口をケア。膠着した展開が続き、原口にもミスが目立っていた。
 
 しかし、後半は森重から早いタイミングで酒井高を経由し、原口の足もとにつなぐ流れを意識するようになると、「相手のサイドハーフが高徳にプレスを掛けに来るようになった」(森重)。結果として、原口が足もとで受けるスペースが出来始め、かつ前を向いて仕掛ける場面が増えていくのだ。
 
 原口は後半、持ち前のドリブル突破を存分に見せつけた。68分にはふたりをかわしてファウルを誘い、75分には縦への仕掛けから本田へのピンポイントクロスを放つなど、随所にアグレッシブな姿勢で日本の攻撃に推進力を生み出そうとした。
 
 左サイド、タッチライン際からの仕掛けは、ユース時代から最も得意とするプレーだ。森重と酒井高の機転の利いた演出によって、原口にとって最高のステージが用意されたのである。