W杯アジア最終予選でB組の日本が首位に立った。日本代表が戦った今回のアウェーUAE戦(2○0)とホームのタイ戦(4○0)2試合で、何より大きかったのはUAE戦での勝利だろう。この一戦で世間から最も注目されたのはガンバ大阪のMF今野泰幸(34)だった。

 中盤3枚の左MFで起用されたベテランの仕事ぶりは抜群だった。どちらかと言えば、ボール奪取にたけた「守備職人」というイメージだったが、攻撃面でも貢献。貴重なチーム2点目まで決め、攻守において確実にMVP級の活躍だった。

 私はG大阪を担当しているが、今季ここまでG大阪での公式戦8試合の活躍ぶりを見ていれば、今野のUAE戦の得点は全く驚きはなかった。日本がUAE戦で採用した中盤3枚を逆三角形にするシステムは今季G大阪も採用している。今野は代表と同じ左MFを既にG大阪で8試合プレーしており、日本代表ハリルホジッチ監督もG大阪の試合を視察してヒントを得たという。もちろん、代表とG大阪での役割や連係は変わってくるが、今野にとって「得点意識」という点では変わらなかったと思う。

 G大阪の長谷川健太監督は、守備力の高い今野を左MFで起用してきた理由を「得点力がある。今ちゃん(今野)がゴール前にいくと迫力が出てくる」と説明。特に今季は、ACLがプレーオフからだったため公式戦初戦が2月7日だった。急ピッチでチーム作りしなければいけなかったため、合宿では主力メンバーと位置を固定して練習を積んだ。指揮官が中盤の両サイドにたたき込んだことは「得点への意識」。とにかくゴール前へ顔を出すことを強く要求した。

 事実、今野は8試合で3得点1アシストの結果を残した。もちろん疲労もたまっていただろうが、得点を取るたびに「楽しい。自分が成長できている気がする」と貪欲だった34歳。UAE戦後は「奇跡」と得点を振り返った今野だったが、勝手に体が動くまでにゴールへの意識は染みついていたに違いない。

 そしてもう1人。G大阪からW杯予選に初招集されたのがMF倉田秋(28)。倉田は、ハリルホジッチ監督が視察に訪れたJ1の柏レイソル戦とFC東京戦で右MFに入っていた。通常はトップ下の役割を任されることが多いが、MF井手口が負傷していた影響で代役を務めていた。

 しかし、器用な倉田は右MFを完璧に務め代表に招集された。UAE戦ではそのまま右MFに入り、クラブの先輩MF遠藤が長年付けた背番号「7」で、遠藤さながらのスルーパスを出し好機を演出。UAE戦をテレビ観戦した長谷川監督も「秋(倉田)のパフォーマンスも良かった」と目尻を下げた。

 今後も日本代表でこのシステムが継続されるかは分からない。けれど、今回この2人が体現してみせた得点意識は、どんな形であっても今後より高まっていくものだと思う。

 ◆小杉舞(こすぎ・まい)1990年(平2)6月21日、奈良市生まれ。大阪教育大を卒業し、14年に大阪本社に入社。1年目の同11月から西日本サッカー担当。担当はG大阪や神戸など関西クラブ。甲子園球場での売り子時代に培った体力は自信あり。