5月13日の直接対決でも、見事なパフォーマンスを見えていたケシエ(左)。ここにきてミラン行きが濃厚になっている。写真:Alberto LINGRIA

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 復活を期すミランにとって、今シーズンのセリエAで大ブレイクした20歳の新星を確保できたとすれば、この上ない朗報だ。しかし、それが思わぬ事態を招くかもしれない。
 
 ミランはアタランタに所属するコートジボワール代表MFのフランク・ケシエの獲得に接近。チェルシーやマンチェスター・U、そして一時は争奪戦をリードしていたローマを先んじて選手サイドと合意し、さらにアタランタにも2800万ユーロ(約33億6000万円)+ボーナスを提示して交渉をほぼまとめたようだ。
 
 強靭な肉体と若さに似合わぬ冷静さを兼ね備えるケシエは、自身初のセリエAでここまで28試合に出場。セントラルMFながら6ゴール・4アシストと攻撃力も発揮し、アタランタ躍進に大きく貢献して注目を集めた。
 
 この「新しいトゥーレ・ヤヤ」とも謳われる逸材の獲得を内定させたとあれば、サポーターが喜ばないはずもない。4月13日に中国資本となり新経営陣に入閣したマルコ・ファッソーネCEOとマッシミリアーノ・ミラベッリSDの手腕を称える声も挙がっている。
 
 だが、イタリア紙『コッリエレ・デッロ・スポルト』は現地時間5月17日、ケシエに220万ユーロ(約2億6400万円)の年俸を保証したことにより、MFジャコモ・ボナベントゥーラ、DFアレッシオ・ロマニョーリ、MFマヌエル・ロカテッリという既存選手たちが、続々とサラリーアップを要求すると報じた。
 
 同紙はまず、昨年12月に20歳となったケシエと1月に19歳となったばかりのロカテッリのサラリーに開きがあり過ぎると指摘。今シーズンここまで24試合に出場し、2得点を挙げているロカテッリの現在の年俸は、わずか40万ユーロ(約4800万円)だ。
 
 同様に、ミラン守備陣の大黒柱でイタリア代表にも定着した22歳のロマニョーリが、200万ユーロ(約2億4000万円)とケシエを下回る年俸に甘んじるとは考え難い。
 
 現在は故障欠場中のボナベントゥーラはこの1月、200万ユーロへの年俸倍増で2020年まで契約延長したばかりだが、現スカッドでは「トッププレーヤー」と位置付けられる選手だ。しかも、代理人はあのミーノ・ライオラである。
 
 そのライオラ代理人がマネジメントする守護神ジャンルイジ・ドンナルンマのサラリーも気になるところだ。マンチェスター勢やユベントス、レアル・マドリーなど錚々たるメガクラブが獲得を狙っているだけに、そもそも契約延長(現行は2018年まで)に漕ぎ着けられるかどうかも問題だが、コッリエレ・デッロ・スポルト紙はライオラがボーナス込みで400万ユーロ(約4億8000円)という“上限”を設けることは認めないだろうと報じている。
 
 さらに、同じくミランに欠かせない存在となったスソも、2か月前まで確実視されていた契約延長交渉の行方がもつれている。選手サイドはアトレティコ・マドリーやトッテナムの関心を材料に、300万ユーロ(約3億6000万円)への年俸アップを求めているという。
 
 中国資本となったことで夏の大型補強が期待されるミラン。しかし、補強が進めば進むほど、人件費の高騰を心配しなければいけなくなるかもしれない。